野武士と落ち武者
                                               
正直言うと・・・最初から負ける戦のような気がしていた
そしてやはり負けたのだ
中途半端に生き残ってしまった私
このままどこに帰ればいいと言うのだろう・・・・
あぁ、しかしもう歩く気力も無い
このままこの場で朽ちるしかないのか・・・なんという最後なのだろう

ある侍が、戦に負け落ち武者となった
致命傷的な傷は負ってないにしろ、彼にはもう生きる体力も気力も意味もなっていた
何をしていいのか、どこに行けばいいのか
わからないまま歩きつづけて、ある山中でついに倒れこんでしまった

青白い月が木々の間から見える

「綺麗な満月だ・・・・」

最後に見る景色がこれならいいだろう
そうだ、戦で血しぶきを見ながら死ぬより美しい月を見ながら死ねる方がいい
私だけ生き延びた事を恥じたが、これは神様がいい死に場所を選んでくれたに違いないのだ
そうだ、これでいい。私はここで死ぬのがいい・・・

落ち武者は倒れこんだままその場を動かず、
ジッと自分が朽ち果てる瞬間を待つことに決めた

段々と意識が薄らいでいく中で、誰かに見られている気がして薄目を開けてみた

あ・・・?・・・人・・?

誰かが落ち武者を上から見下ろしていた

野武士か・・・・?

月明かりを背に立って見下ろしていたので、最初はシルエットしか見えなかったが
目がなれ初めてきたら、それが野武士だという事がわかってきた

野武士が・・・あぁ、もうダメだ。殺される・・・やはり最後は血の中で死ぬしかないのか・・・

落ち武者は諦めた
抵抗した所で自分が勝つとは思えない。もうそんな体力は自分には無い
野武士は自分を襲い首をとって手柄とするだろう
あぁ、もうどうにでもしてくれ。どんな最後であろうと死ぬには間違い無い



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